第181回 不動産の取引に手付金というのがありますが、その種類と注意すべき点を教えてください。
不動産の取引において「手付金」は非常に重要な役割を果たします。手付金とは売買契約の締結時に買主が売主に支払う金銭であり、契約の成立を示す意思表示で機能するのです。しかし一口に手付金といっても実際にはその性質や目的によっていくつかの種類が存在し、それぞれに異なる法的意味や注意点があります。不動産取引において手付金の取り扱いを誤ると思わぬトラブルや損失につながることもあるため、その種類と性質を理解しておくことが大切です。
手付金には主に「証約」「解約」「違約」の3つの種類があります。まず「証約手付」は、契約が成立したことを証明する性格の手付金です。この場合支払われた時点で売買契約が法的に成立したことを確認するためのものであり、特別な効果を持つわけではありません。次に「解約手付」は、契約当事者が一定の条件下で契約を解除できる権利を持つ手付金です。一般的な不動産取引においてはこの「解約手付」が最も多く使われています。
この手付を基に買主が契約を解除したい場合には支払った手付を放棄し、売主が解除する場合には手付の倍額を買主に返還することで契約を解除することができます。ただし、これは引渡し前かつ契約履行前に限られます。最後に「違約」は契約違反があった場合の損害賠償の一部で扱われる手付であり、違反当事者が契約を履行しなかったときのペナルティ的な意味合いを持ちますが実務上はあまり一般的ではありません。
不動産取引で最もよく用いられる「解約手付」に関しては、特にその金額設定に注意が必要です。額に明確な法的上限はありませんが、売買価格の5~10%程度が相場とされています。あまりに高額な手付金を設定すると解約時のリスクが大きくなり、逆に低すぎると契約の重みが薄れてしまう可能性があります。