第89回 あずまくんが答える『不動産会社さんが、「購入するのは抵当物件ですが、我々にお任せください」とのこと。心配はしていないのですが、「抵当物件とは?」、また通常の取引とどのように違うのですか?』

抵当物件というのは、その物件の所有者や住宅ローンや事業ローンを利用するときに抵当権を設定した物件です。抵当権というのは、借主つまり物件の所有者が債務の返済をすることができなくなったときに、担保となる物件を取り上げ、売却代金を優先的に返済に充てることができるという権利です。通常の取引であれば代金を支払って、所有権を変更するだけで済みますが、抵当物件を取引する場合には抵当権の設定を消さなければ、債権者によっていつ売却されるかわかりません。ですから、一般的には抵当物件の取引では、売却をするときに抵当権を抹消する手続きをします。
本件については、不動産会社がその手続きのサポートをするということです。なお、抵当権の設定というのは、法務局に抵当権設定登記をしなければいけないのですが、消すときには抵当権抹消登記を行います。この手続きで必要な手数料などは、すべて債務者であり売主である前の所有者が負担するようにと契約に盛り込んでおくと良いでしょう。
抵当物件の取引では、新しい所有者が代金を支払って、そこから債務の返済が行われて所有権の移転と抵当権抹消登記を同時にするという流れになります。したがって、抵当権を抹消した状態での購入はできません。
ここで注意をしなければいけないのですが、代金を支払って、所有権を移転したとしても自動的に抹消の手続きをされるわけではありません。実際に前の所有者が抵当権抹消登記をしていなかったら将来的にトラブルを引き起こします。抵当物件の取引をするつもりなら、そういったことの確認をちゃんとしてくれる不動産会社を利用することが重要です。
なお抵当物件では、一つの物件で債権者が異なる複数の抵当権を設定できます。そのときには、一部だけを抹消しても不完全なので、全てにおいて手続きがなされたのかを確認する必要があります。不動産会社にはその点も確認してもらいましょう。