第73回 あずまくんが答える『先日不動産会社に行くと、私は宅地建物取引士です、と紹介されました。宅地建物取引士とはどのようなことをするのでしょうか。』

不動産の売買や仲介などの取引を行う宅地建物取引業者は、事務所等を開設するときには「成年の専任の宅地建物取引士」を置かなければいけないという義務が課せられています。そして重要事項説明は宅地建物取引士の資格を持った人がしなければいけないという規定があります。このことから宅地建物取引士は、取引の際に口頭で重要事項説明をすることが大切な仕事とされています。
 宅地建物取引士という国家資格を持つ人がわざわざ重要事項説明をする理由は、売買あるいは賃貸の契約を結ぼうとしている消費者の利益を守るためです。そもそも不動産の売買や賃貸というのは、動く金額が大きく気軽にできるものではありません。ですから消費者が不利益を被ることなく、公正な取引を行えるようにするのが、不動産会社の社会的な責任です。
 しかし、不動産の取引では、土地・建物が登記に記録されている内容や都市計画法などの法律によって受ける制限、集合住宅の管理規約、支払いなどの期日など確認するべきことが数多くあります。当然ながら今の持ち主や仲介をする不動産会社は、そういったことを知った上で売ったり貸したりするのですが、消費者は取引をするときに知らされる情報が少なくありません。それを重要事項説明書という形で消費者に伝えるとしても、不動産業界の専門用語が使われていると短期間で素人が内容を理解することは難しいです。
 もし、十分に重要事項説明書の中身を理解しないままで契約が交わされたら消費者が思わぬトラブルに見舞われる恐れがあります。また、消費者が理解していないことを承知していながら取引を繰り返せば、不動産会社の信用も損なわれます。そんなことにならないように宅地建物取引士はこれまで培ってきた知識と経験を生かして消費者にわかりやすく解説することで、取引を公正かつ円滑に進めることを使命としています。もし、説明されてもよくわからないところがあれば、消費者は納得できるまで質問できるので心配はありません。なお、説明の際には宅地建物取引士証の提示が義務付けられています。