第195回 不動産の贈与について、親子間で行う際の注意点を教えてください。
不動産の贈与は親子間で資産を移転する手段とよく用いられる方法ですが、贈与には贈与税をはじめとする各種の税負担や法的手続きが伴うため慎重な対応が求められます。特に親子間の不動産の贈与は相続対策の一環と行われることも多く、長期的な視点の計画が重要となります。誤った理解のまま進めると多額の税金が発生したり、将来の相続時にトラブルが生じるおそれがあるため、事前に正確な知識を得ておくことが不可欠です。
まず不動産の贈与において最も重要な注意点は、贈与税の負担です。贈与税は年間110万円の基礎控除を超える贈与に課税され、累進課税となっているため贈与額が大きいほど税率も高くなります。親子間の不動産の贈与は固定資産評価額が高くなる傾向があるため、課税対象額が大きくなりやすく場合によっては数百万円単位の贈与税が発生することもあるのです。そのため贈与のタイミングや方法を工夫し、贈与税を軽減できる制度を活用することが非常に重要です。
代表的な制度として「相続時精算課税制度」があります。これは親が60歳以上で子が18歳以上である場合に選択できる制度で、2,500万円まで贈与であれば非課税となりそれを超える部分については一律20%の税率で贈与税が課される仕組みです。ただしこの制度を選択すると、以後の贈与に関してはすべて相続時精算課税が適用されるため年間110万円の基礎控除は使えなくなります。贈与された財産は将来の相続時に遺産と加算され相続税の計算に組み込まれるため、相続税の負担が増える可能性がある点にも注意が必要です。
次に不動産の贈与には登録免許税や不動産取得税といった付随費用もかかります。登録免許税は名義変更登記の際に必要な費用であり、不動産の固定資産税評価額の2%が課税されます。不動産取得税は原則として評価額の3%から4%で課税され、これらの税金は贈与税とは別に必要な実費となります。