第194回 不動産の贈与について、夫婦間で行う際の注意点を教えてください。

第194回 不動産の贈与について、夫婦間で行う際の注意点を教えてください。

不動産の贈与は親子間や親族間で行われることが多い取引ですが、夫婦間の贈与もまた重要な場面で発生することがあります。例えば夫が単独で所有している自宅を妻に贈与したい場合や、住宅購入時に妻名義にするために夫が資金を提供するようなケースが該当します。ただし夫婦間における不動産の贈与は、民法や税法上の特例がある一方で適用条件や手続きに注意を要する点も多く事前の理解と慎重な対応が求められます。
まず最も基本的な点と、夫婦間であっても不動産の贈与は「贈与税」の課税対象になります。贈与税は無償で財産を受け取った側、つまり受贈者に対して課される税金であり、たとえ夫婦間のやり取りであっても一定額を超える贈与が行われれば課税対象となるのです。通常の贈与では年間110万円の基礎控除が適用されますが、不動産の評価額は大きくなるためこの範囲に収まらないことがほとんどです。
そこで活用されるのが「夫婦間贈与の特例」と呼ばれる制度です。これは婚姻期間が20年以上の夫婦が、配偶者に対して居住用不動産またはその取得資金を贈与する場合に適用される制度で基礎控除110万円に加えて最高2,000万円まで贈与が非課税となる特例です。この特例は一生に一度しか使えず贈与を受けた不動産はその後、原則と贈与を受けた者が自宅に住み続けることが条件です。形式的に名義を変えるだけではなく実際に居住する必要があるため、税務署からの確認に耐えうるよう住民票の移動や居住実態の証拠をきちんと残しておくことが重要です。
不動産の贈与を受ける際には、登録免許税や不動産取得税といった別の税金もかかることを忘れてはなりません。たとえ贈与税が非課税であっても名義変更をする際には登録免許税が評価額の2%、不動産取得税が原則と評価額の3~4%課されます。これらの費用は現金で支払う必要があるため、事前に必要資金を見積もっておくことが大切です。