第193回 不動産取引に係る消費税が複雑だと聞きました。消費税がかかるものとかからないものを教えてください。

第193回 不動産取引に係る消費税が複雑だと聞きました。消費税がかかるものとかからないものを教えてください。

不動産取引に係る消費税の取扱いは一見すると非常にわかりにくく、取引当事者が誤解したまま契約を進めてしまうケースも少なくありません。そもそも消費税は事業者が対価を得て行う資産の譲渡やサービスの提供に課されるものであり、すべての不動産取引に一律で適用されるわけではありません。具体的には売買される物件の種類や売主の属性、土地か建物かといった要素によって課税対象かどうかが分かれます。そのため、個別の取引内容に応じてかかるものとかからないものを正確に判断することが重要です。

まず最も基本的に「土地の譲渡」は非課税です。つまり、不動産の売買において土地部分の対価には消費税はかかりません。これは、土地は消費という概念にそぐわないという税法上の考え方に基づいており、宅地・田畑・山林など利用形態を問わず土地そのものの売買に消費税は課されないというのが原則です。

一方で「建物の譲渡」については、売主が課税事業者である場合には原則として消費税がかかります。例えば不動産会社が新築住宅を建てて販売する場合、その建物部分の価格には10%の消費税が加算されます。中古住宅であっても売主が不動産業者や法人などの課税事業者である場合には、建物部分に消費税が課されることになります。これに対して売主が個人で課税事業者でない場合、たとえば一般の個人が自宅を売却するようなケースでは建物部分も含めて非課税となるのです。つまり中古住宅の取引で消費税が課税されるかどうかは、建物の新旧ではなく売主が課税事業者かどうかで決まるという点に注意が必要です。賃貸借に関しても消費税の取扱いは異なります。

税の知識が乏しいまま取引を進めると思わぬ追加費用が発生したり、契約後にトラブルになったりする可能性もあるため事前の確認と専門家の助言を活用することが重要となります。