第32回 『名草地方の伝承“名草戸畔”を知っていますか?』

第32回 『名草地方の伝承“名草戸畔”を知っていますか?』

 皆さんは“名草戸畔(なぐさとべ)”という人物の名前を聞いたことがありますか? 名草戸畔(なぐさとべ)とは、紀国(現在の和歌山県)におよそ2000年前に実在したと思われる女性首長のことで、『日本書紀』にひと言“神武に殺された”とだけ書かれています。多くの人に、名草戸畔が神武あるいは神武軍に遺体を切断されたとも言われていますが、地域には、名草戸畔の遺体を頭、胴体、足の3つに分断し、3つの神社(宇賀部神社・杉尾神社・千種神社)に埋められているという伝説もあります。

 名草戸畔伝承のきっかけとなったのは、著者・なかひらまいさんによる『名草戸畔~古代紀国の女王伝説~』という本(現在は増補改訂三版)。この作品は名草地方(現在の和歌山市と海南市)で語り継がれてきた名草戸畔の伝承をもとに構成したもので、現地での丁寧な取材に基づいて、一般で語られている事とは違う伝承を考察しています。2019年3月には、地元劇団による舞台が上演される名草戸畔伝承。本を片手に想像力を働かせて、古代女王への浪漫に想いを馳せてみてはいかがでしょう?